第86章 景色は色付いて
シカ「俺は、キリは一緒に戦う方が強いと思ってる。まぁ一人でも充分強ぇけどな」
キリ(……ありがとう)
そう言って、いつもシカマルがキリを認めて、理解してくれたから。
何十時間、何百時間の時をかけて、一緒に修業を重ねてきたから。
いつからか、一緒に息をすることが出来るようになっていた。
キリ「あなたは戦いやすいわ」
シカ「俺もキリとは組みやすいぜ。まあ最初は全然ついていけねぇからよ。苦労したけどな」
今も油断をすれば、すぐに置いていかれると、シカマルは冗談混じりに本音をこぼす。
キリ「あなたには、背中を預けられる」
今どこにいて、どうするのか、どうして欲しいのか、それが不思議と伝わってくる。
そして、同じ様にシカマルにもこちらの思いが伝わっているから、今はもう迷いなく行動する事が出来る。
シカ「おう、任せろ」
ニッと笑ってそう言ったシカマルは、さらに告げる。
シカ「俺もお前に預けるからよ」
キリ「ええ、預かるわ」
出会った頃は、全く違うところにいた二人。
それがいつからか、向かい合って、近付いて。
今では、互いにその背中を預けられる。
そんな心地の良い信頼が二人を結んでいた。
キリ「あなたに会って、私は変わったわ」
樹の里での出来事を境に、目の前は真っ黒に染まった。ずっと出口なんてないと思っていた。もうそれを、探してもいなかった。
息が出来なくて、ずっと苦しかった場所から、すくい上げてくれた人。
シカマルのそばにいて、初めての感情がたくさん生まれた。
好きだと、人を愛するということを、初めて知った。
恋というものを、生まれて初めて体験した。