第86章 景色は色付いて
キリ「あの時から、私は生きることを謝るのをやめたわ」
親友から許されて、約束をして。
みんなから背中を押してもらって、ようやく立ち上がることが出来た。
みんなが自分の足で立つことを、また選ばせてくれたのだ。
キリ「……今も、まだ。自分だけが普通に生活をすることに、罪悪感を感じることがあるけど」
みんなの人生と平穏をこの手で、奪ってしまったこと。
キリ「この重みは一生消えないし、消してしまうつもりはないわ」
悔やんで、嘆いて、責め立てて。でも、それだけじゃない。
キリ「でも今は、私の幸せを願ってくれる人もたくさんいる事がわかったから」
みんながこんな自分に教えてくれた。だから、もう全てを手離すのではなくて、全てを背負って、これからを精一杯生きていく。そう決めたのだ。
そう言えば、シカマルの背中がぐいぐいともたれかかるように、キリへと近付いた。
シカ「言っとくけど、俺もその中の一人だからな」
その中の一人どころか、シカマルが一番に幸せを願っているといってもいいだろう。それが伝わらないほど、鈍感ではない。
キリ「ふふ、ありがとう」
「知ってるわ」と言って、ぐっとシカマルの背中を押し返してみせれば、シカマルからも笑い声が聞こえる。
そんなシカマルの背中を見て、キリは思いを募らせた。
キリ「私……」
シカ「なんだ?」
キリ「もう二度と、誰かと背中を合わせて戦うことは無いと思ってた……」
樹の里を去り、もうそんな仲間に出会えることも、そんな仲間を持つことも、ないとそう思っていた。