第86章 景色は色付いて
キリ「……あなたは、凄いわ」
拗れに拗れたイチカとキリの仲介役なんて、相当レベルの高い面倒事に、自ら首を突っ込んでいることを、シカマルは気付いていないのだろうか。
そんなシカマルの優しさに、胸の奥がふわりとくすぐられた。
キリ「イチカが、初対面のあなたの指示に従った。きっとイチカが無意識のうちにあなたを信頼出来ると思ったから。……それはあなたの人柄」
特に決して冷静とは言えない、感情が荒ぶっていた状態のイチカに、シカマルは話を通したというのだから、驚かされる。
イチカのことだから「えーいもういい突っ込め!」というような勢いもあったのだろうが、そこへ辿り着くまでの過程が凄いのだ。
キリ「おかげで、イチカとこうしてまた話せるようになったわ。それが私は本当に嬉しい」
心の底から、嬉しそうにそう告げたキリに、シカマルも自然と口角が上がる。
シカ「良かったな。俺も仲間を大切に思う気持ちはわかるからよ」
親友と言われれば、すぐにシカマルの頭に浮かぶチョウジの姿。
そんな存在がいるのは、本当に恵まれた事なのだ。だからこそ、その繋がりを大切にしたい。
キリ「あなたがいなかったら、きっとここまでイチカと話す事は出来なかった」
イチカはきっとキリにどこか気を遣ったまま、本心でぶつかれずに終わってしまったのではないか。
あそこまでさらけ出すことが出来たのは、シカマルの後押しがあってこそだろう。
キリ「私とイチカを繋いでくれて、本当にありがとう」