第86章 景色は色付いて
いくら、いのだって単身で他里に行き、大暴れはしない。
けれど、キリの幼馴染みときたらどうだ。
シカ「あいつは本能でしか動いてねぇ」
たとえいけない時だって、いけない? なにそれおいしいの? いくけど何か。いかない選択肢なんか、そもそもないけど。
そう言って、制止も意味を為さず、勝手に飛び込んでいる。
イチカはそんな女だ。シカマルには扱いきれない。
そんなシカマルの評価に、可笑しそうに笑いながら聞いていたキリは、だけど、と言葉を落とした。
キリ「あなたも人のことは言えないわ」
シカ「は? 俺? なんで俺なんだよ?」
あんな鉄砲玉と、同じにされては困ると言うシカマル。
キリ「イチカがあなたに変化してたのは、あなたの提案でしょう?」
再会したものの、わだかまりがあったイチカとキリ。
イチカはシカマルに変化して、キリに樹の里について、現状について、話を聞いた。
この件に関して本人に確認はしていないが、確信がある。イチカだけならば、絶対にそんな手段は選ばない。
あれは、シカマルが考えたものだったのだろう。
キリ「確かにイチカといると、驚くことも多いけど。私はあなたに驚かされることも多いわ」
シカ「あーありゃ確かに、俺もあいつも、いつバレるかヒヤヒヤしてたな」
そう、シカマルが様子を見守っていた時。初めのうちは、イチカもそれなりに考えて話していたが、途中から感情的になったのか、人の姿で好き勝手に話すものだから、おいおいと内心言葉がもれたものだ。
シカ「まあでも、バレても悪いようにはならねぇだろ」
イチカもキリと話したくて、そうしたのだ。キリの性格上、それで怒るようなことはあり得ない。
それにそもそも、最後までバレないとは思っていなかった。
シカ「話が出来なくなるようなら、俺が間に入るつもりだったしな」