第86章 景色は色付いて
シカマルはキリに効力のある薬が作れると、シカクに報告したが。その材料では解毒剤にはならないと告げられ、キリの痛みが引いたのは、ただの偶然だった事を知った。
キリ(……違う)
シカ「たまたまそうなっただけで、俺の解毒剤は何も関係ねぇ」
キリ「違うわ。確かにあなたのおかげで痛みは引いた」
そう言っても、違うと言うシカマルに、キリは首を振ってそれを否定する。
この暗殺が、もし暗部によるものだったのなら、ここまで胸が痛むこともなかっただろう。
優しげなフミを。シカマルやシカクとも関わりがあるようなフミを使って、計画的にされたものだったから、なおさら心が苦しくなったのだ。
ただでさえ、生きることへ罪悪感があったキリに、それは拍車をかけることになる。
やはり、自分が普通に生きていてはいけないのだと、許されないのだと、そう思ったのだ。
締め付けられるような激しい胸の痛みは、毒による影響ではなくて、心が痛みを訴えていたのだと、後から気付いた。
傷に傷を重ねて広がり続けるそれを、シカマルが止めてくれた。
キリ「あなたが私に、懸命に解毒薬を作ってくれて」
その時のシカマルは、手足の痺れも少しでもどうにかならないかと、キリのために必死になってくれた。
キリ「ここへいて欲しいと言ってくれたから」
だから、胸の痛みはするりと取れていったのだ。
それが解毒薬となり、キリに今一番必要なものだった。
キリ「あの時の私には、その言葉が何より嬉しかった」