第86章 景色は色付いて
キリ「他にも、話したいことがたくさんあるわ」
ありがとうと、何度伝えても足りないほどに。
そんなキリに、シカマルはその全部を教えてくれと笑って、続きを促した。
キリ「私が……毒を、盛られた時」
シカ「!」
そう、フミの手によって、毒殺を図られた時。
先日カカシから聞いた事の真相では、これまでの騒動は全て、ナガレがキリの存在を否定的に思っている木ノ葉の者達を、動かしていたのだと伝えられた。
キリの暗殺を見せかけても、実際は捕縛する事が目的である。
だから、フミとキリが戦闘になれば、どこかでキリは暗部によって回収される予定だった。
本来ならそうなる予定だったものを、フミは毒殺という手法を選択したため、それは未遂に終わる。
キリ「あの時、本当は……悲しかった」
シカ「……おう」
良く思われていない事は知っていた。良く思われたいと、願ってもいなかった。
キリ「受け入れてもらって、みんなで楽しく。そんな事を望んでいたわけじゃないけど……でもにこやかに接近されたのが、自分を殺すためだというのは少し……」
それは12歳の心に、大きなシミを残していった。
キリ「でも、あなたがまた手を引いて、連れ出してくれたわ」
シカ「あの時は、少しでも早くあそこから離れたかったからな」
フミに怒りを露わにして、あの酷く息苦しい場所から、シカマルは迷いなく連れ出してくれた。
ずんずんと手を引いて先導してくれるシカマルに、どれだけ救われたことか。
キリ「その後、解毒剤まで作ってくれた」
シカ「あー、あれな……」
どこか、申し訳なさそうなシカマルの言い方。その理由を聞けば、シカマルはぽりぽりと頬をかいた。
シカ「あの時、キリの痛みが引いたからよ。親父に製薬について聞いたら、解毒剤としては成り立ってねぇって言われた」