第86章 景色は色付いて
そして、木ノ葉隠れの里へ来て、半年が経った頃。
任務中に、不運にも雲隠れの抜け忍に遭遇。そして雷影の奇襲を受け、シカマルとヒナタを庇ったキリが重傷を負うことになり。
そのまま入院をしたキリに、シカマルは毎日見舞いへと訪れた。
会わないと拒絶しているのに、毎日毎日、花を届けてくれた。
おかげで、いつも里のどこかであの花を見るたびに、シカマルを思い出すようになった。
面会謝絶にして他者との関わりを絶っていたのはキリだが。たった一人でいるこの静か過ぎる病室に、この花が安らぎを与えてくれていた事を、シカマルは知らないだろう。
普段は修業に励むことで、考える時間がなかった。だから、病院で安静にしていなければならない間は酷く心がすり減った。
一人でじっとしている間、樹の里での凄惨な出来事が、絶えずキリの心に浮かんで、蝕んでいくのだ。
それを、ふわふわと咲く桃色の花は、優しい香りと共に、キリを癒してくれていた。
キリ(……本当は嬉しかった)
切り花でも花待ちが良い花で、退院する頃にはいつも大きな花束となって。
退院の日には、決まってそれを両手に抱えて帰る。
きっと、この先何年経ってもずっと、この花を見れば、キリはシカマルを思い出すのだろう。
キリ「覚えてる?」
そう言って、キリは森の向こうに指をさした。
キリが自宅で刺客に襲われ、そこに居合わせたシカクの命令で、キリが奈良家で世話になることが決まった時。
奈良家の優しい空気に馴染むことが出来ずに、家を出たことがある。
ここよりもう少し先へ行って、森を抜ければ、そこはシカマルがキリを見つけてくれた場所があった。