第86章 景色は色付いて
キリ「ここへ来てはじめて、助けてくれたのはあなただった」
シカ「? いつの話だよ」
キリ「アカデミーで、くノ一三人に私が絡まれていた時」
シカ「あーあん時か、懐かしいな」
そう言って笑うシカマルが、キリと同じようにあの頃を懐かしんだ事が、なんだか嬉しい。
シカ「くくっ」
キリ「どうかした?」
笑い声をもらして、肩を揺らすシカマルに問いかければ、シカマルは可笑しそうに告げる。
シカ「いや、あん時のお前思い出すとよ。中々すげぇっつーか、強烈だよな」
完全鉄壁のブリザードをその身にまとっていたキリを思い出して、くつくつと笑うシカマルに、キリは少し頬を赤く染めた。
笑い続けるシカマルの背に、ポスッと拳を落とせば、悪い悪いと言いながらも楽しそうで、キリの胸もふわりとあたたかくなる。
キリ「手を引いて外へ連れ出された時は、驚いたわ」
その結果、人生ではじめてのサボりというものをしてしまった。
シカ「う゛……俺もあん時はまあ、必死だったっつーか、なんつーかよ。早く話してぇけど、キリは捕まんねぇし」
連れ出した先で、シカマルはキリに頭を下げた。
鹿を攫ったと勘違いをした事や、チョウジとの演習試合に悪意はなかった事がわかり、誤解をしていたと。
キリ「私に、謝ってくれたわ」
放っておけば良かったのだ。
悪評流れる中で、キリ自身もこの悪態なのだから。わざわざ〈嫌な奴〉に、真正面から謝ったりしなくとも良かったのに。
当時の失態を思い出したのだろう。バツの悪そうにしているシカマルに、少し笑って、キリは続けた。
キリ「驚いたけど……嬉しかった」
シカ「嬉しい?」