第86章 景色は色付いて
キリ「!!」
突如、シカマルから腕を掴まれて、キリは無意識のうちに伏せていた顔を上げる。
シカ「5代目のところに行くぞ!」
「早く乗れ」とキリの腕を引いて、背中を見せたシカマルの姿に、キリの胸がぎゅっと掴まれたかのように苦しくなった。
キリ(腕……傷がこんなに……)
今見えている部分だけでも、大量の傷があるのがわかる。
その全ては、数日前には無かったもので、紛れもなくキリがつけた傷だった。
キリは、その傷だらけになった腕に、するりと身を寄せた。
シカ「!」
キリ「ごめんなさい」
この腕以外にも、一体どれほどの傷があるのだろうか。
その記憶は、あった。
キリがシカマルにしたこと、そして……シカマルがキリにした対応。
その全てを、覚えている。
シカ「!!」
ぽすりと、シカマルの背に頭を預ければ、少しシカマルの身体に力が入る。
キリ「本当に、ごめんなさい。いくら謝っても……謝りきれないことを私は……」
痛くないはずないだろう。
通常の身体では、治るはずがない。
それだけの怪我を負わせたのに、その口から出るのは、キリの心配ばかりで。
キリ(あなたの方が、痛いでしょう)
キリは、無傷なのだ。
薬物の過剰摂取。
その影響で、身体に負担こそあったようだが、それは安静にすればすぐに治るようなもので、シカマルの生傷とは違う。
ごめんなさいの意を込めて、キリはシカマルの傷だらけになった腕を、そっと抱きしめる。
シカ「!!!」
すると、先ほどよりもなおさら、身体を強張らせたシカマルは、困惑気味に口を開いた。
シカ「あー、キリ、その、病院にだな」
キリ「怪我はないわ」