第86章 景色は色付いて
シカ「!」
キリの笑い声に反応して、振り返ったシカマルは目をまんまるにして、その名前を呼んだ。
シカ「キリ!」
キリ「っ……」
もう何度も呼ばれて、聞き慣れているはずのそれに、心臓は大きく跳ねて、体温まで上がった気がした。
それからあとは。
シカマルが、薬草を置いて立ち上がる。
迷いなくキリの方へと向かって、駆け出す。
向けられる瞳には、驚きと喜びを混ぜたような熱があって。
そんなシカマルのひとつひとつの行動に、キリの鼓動は大きく鳴り続けた。
シカ「キリっ、お前なんでこんなところに……!」
キリ「っ……」
手を伸ばせば、すぐに届いてしまいそうな距離に、シカマルがいて。
いつの間にか、キリに追いついていたシカマルの背丈。これまで少し高いはずだった目線は今、同じところにあった。
頬が、熱くなるのがわかる。
シカ「おい、キリ!? どうした?」
そんなキリの態度に、慌てるシカマルに、何か言わなければと思いはするが。
キリ(っーーだ、駄目)
ドッドッと最早、早鐘状態の心臓がうるさくて仕方がない。
自分はこの二年間、どのようにしてシカマルと接してきたのだろう。
シカ「大丈夫か!? お前顔真っ赤じゃねぇか!」
キリ「っ」
元凶である好きな人から、紅潮をストレートに指摘される羞恥がいかほどか。
一体これをどれだけの人が、理解してくれるのだろうか。
なおさら上がる体温に、これまで普通でいられた自分が不思議に思う。
だって、こんなにも。
キリ(こんなに、好きなのに)