第86章 景色は色付いて
第86話 景色は色付いて
医療員とシノと別れたキリは、先ほどの出来事に思いを巡らせる。
キリ(いつの間に、あの二人が……)
一体いつからどうなって、そうなったのか。
それならそうと、医療員も少しぐらい話してくれてもいいものを。世の中、不思議なことがあるものである。
狐につままれたような気分になりながら、キリは一人、病院を後にする。
外へ出て見上げれば、空はどこまでも青くて、気持ち良さそうに流れていく雲が見えた。
キリ(あ……)
その瞬間、頭にシカマルの姿が浮かぶ。
彼がよく空を見上げるから、一緒になって空を見上げて、そうして二人で過ごした時間はどれほどあっただろう。
キリ「っ……」
そんな事を思っていれば、次々と頭の中が。そして心の端っこから端っこまで、シカマルばかりが浮かんで、キリの心が埋まっていく。
キリ(もう……)
無理だと、思った。
好きだと思う気持ちが溢れ出る。
今まで。
どれだけ押さえつけてきただろう。
どれだけ諦めてきただろう。
どれだけ見ないフリをしてきただろう。
叶わない、叶えてはいけないものだと思っていたこの気持ちは、もう。
キリ(本当に伝えても……いいの?)
溢れて止まらないのに、言葉に出来なかったそれを、永遠に口にする事がなかったはずのそれを。自分は告げてもいいのだと、思った時。
じわりと、目に涙がたまる。