第85章 始まりと終わり
「そんなに元気なら、薬草でも採ってこい」と。
シカマルの治療に馬鹿みたいに使ったものだから、足りていないのだと、綱手はそれはそれはお怒りだったようで。
そんな綱手の命令を無視出来るわけもなく。今シカマルは薬草採取へと向かっているらしい。
『この事もキリさんにお伝えしようと思って来ました。じゃあ、私たちももう行きますね。キリさんも早く行って下さい』
鈴を転がすような、医療員の愛らしい声が耳に届く。
医療員からひときわ、手をきゅっと強く握られた。
『幸せに、なって下さいね』
《キリさんも……シカマルさんも》
そっと、手を離した医療員は、最後にもう一度。
病院へ来た際に、いつもそうして迎えてくれた笑顔を、見せてくれる。
『それではキリさん、また』
踵を返した医療員へ、ありがとうと礼を告げれば、医療員は振り返ってぺこりと頭を下げた。
シノ「ああ、行こう」
『楽しみですね』
そんな和やかな会話を広げながら、去っていく二人の背中を見送った。
…………………………
何気ない会話をしながら、病院が見えなくなったあたりで、医療員は足を止めた。
それにならって、シノも立ち止まれば、医療員はゆっくりと息をついた。
『ふーー………』
緊張が、ようやく解ける。
キリのわだかまりをなくすために、シノと話し合って今回のような形に落ち着いたのだが。
『上手く……いきましたよね』