第85章 始まりと終わり
第85話 始まりと終わり
医療員に打ち明けて、三日が経過した今。キリは、心の靄が晴れないままだった。
医療員と別れた後、綱手によって薬の後遺症がないか、それはもう時間をかけて入念にチェックされた。
ちなみにシカマルも同じく入院している。
しかしシカマルは、綱手が安静にしていろと言っても、大丈夫だと言ってすぐに動こうとしていたようだ。それに腹を立てた綱手によって、今は治療室に監禁されているらしい。
それを聞いて、キリも自分はもう平気だと思ってはいても口に出さず、綱手の検査に大人しく従った。
そしてようやく、問題無しと判断されて、キリは今日退院することになるのだが。
キリ(………)
キリの心に、引っかかっているものがある。
結局あの日、医療員ときちんと話は出来ていない気がした。
あれは、本当に彼女の本心だったのか。
キリ(全部が嘘ではないと思うけど……)
その瞳が、揺れている時があった。
笑顔がぎこちないことがあった。
でも、真っ直ぐに目を見て、告げてくれた言葉もあった。
まだ話すことがあるはずだ。だから、もう一度医療員に会って、話がしたい。
退院の手続きを終えて、キリは医療員を探して院内を歩いていると、すぐに目当ての人物は見つかった。
キリ「!」
『キリさん』
そこには普段の仕事着とは違って、私服姿で、髪も結わずにおろしている医療員の姿が見える。
『こんにちは』
ふわりと笑う医療員に、つられてキリもふわりと挨拶を返した。
キリ「こんにちは。今日は、お休み?」
見慣れないその姿は、とても新鮮で、愛らしく思う。
『はい。キリさんが退院だと聞いて、お会い出来て良かったです』