第84章 叶わぬ恋の先

キリ「それに……カカシさんは、身柄を押さえることで、大丈夫だと判断したんですよね」

本当にナガレが危険分子にしかなれないのならば、そもそもそんな選択肢を、カカシは用意しないだろう。

カカシは、ナガレを見て改善の余地があると、判断したのだ。


よろしく頼むと頭を下げれば、カカシは笑い声を上げた。


キリ「？」

カカシ「いやーさすが親友だね。イチカちゃん、だったかな。全く同じ反応だったよ」


イチカの去り際に、カカシはイチカの意見も聞いたようで。まるで再現を見ているようだと言って笑った。


キリ「イチカも……」


イチカは今、どんな想いでいるのだろうか。それは、キリとほとんど同じで、そして少し違うのだろう。

その全部を聞かせて欲しいし、聞いて欲しい。

話したいことが、たくさんある。


親友の存在が、恋しかった。



カカシ「心配しなくても、近々会いに来るって言ってたよ」

キリ「！」


おそらく、頭の中が透けて見えていたのだろう。それが少し気恥ずかしくて、視線を下げて頷けば、カカシはふっと笑い声を漏らした。

そして、ゆっくりと伸びてくる手に、キリが顔を上げれば、そのままぽんぽんと頭をなでられた。


キリ「カカシさん……？」

カカシ「……止める人がいれば、あの人は止まれると思う。ま、その辺りは俺がしっかりやるから安心していいよ」



ナガレの中にも葛藤があった。

だが、溢れる才能が、抑えきれない研究意欲を呼ぶ。

そして悲しいかな、樹の里の住人の全面的信頼が、それを後押ししてしまった。

それがナガレを野放しにする結果になった。


抑制する者がいれば、おそらく。少し違えば、そんな穏やかな未来があったのだと思うと、自然とカカシの眉が下がった。


キリ「ありがとうございます……っ！？」


突然わしゃわしゃと激しく頭をなでられて、キリは目を丸くする。


カカシ「よく頑張ったね」