第84章 叶わぬ恋の先
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カカシ「ーーで、ーーだよ。ーーだから。あとはキリ次第かな」
キリ「そう……ですか」
カカシは、キリが気を失った後の出来事を、ひとつずつ丁寧に説明してくれた。
全員、無事でいること。
イチカたちは、樹の里のみんなが心配しているだろうからと、報告に戻ったこと。
ナガレたちは、カカシの監視下で拘束されていること。
キリたちは、ナガレに騙され、そして愛されていたこと。
シカマルが、キリのことをとても心配して帰りを待っていること。
キリ「……カカシさん……私、は」
まずみんなが無事でいた事に安堵して。
実験体として使用されていたことが悲しくて。あの日、自分が里のみんなに手をかけた感触が蘇って。
全て仕組まれていたことだとわかった今、後悔と、謝罪と、絶望が入り混じって。
本当にいくつもの感情が、重なり合って絡まって、今の気持ちをどう表していいのかわからなかった。
騒動を起こした犯人であるナガレを、今後どうしたいのか。そうカカシは尋ねた。
カカシ「俺が身柄を押さえてもいいけど、なにせした事が事だからね。キリが許せないなら……それでもいいと思うよ」
キリには、その資格があると判断を委ねられて、キリは黙り込んだ。
ハッキリとは口にしていないが、許せないのならば、その命をもって償ってもらえばいいと、そう言っているのだろう。
キリ「……カカシさんに、お願いしてもいいですか」
しばらくの沈黙の後に、そうこぼせば「本当にそれでいいのか」と、再確認をされる。
キリ「はい」
騙されていた事実は、もちろん悲しくて、心は痛い。
だが、愛されてもいたと聞いた瞬間、良かったとそう思った。
それがどこまでなのか、自分にはわからないけれど。あの優しさや笑顔の全てが、嘘ではなかった事が嬉しかった。
全く恨んでいない。とは、言えないが、ナガレを殺したいとは思わなかった。