第83章 ヒーロー
シカ「何言って……」
キリの気持ちなんて一切考えることなく、私欲を満たすためだけに接し続けてきたナガレが、そんなことをするわけがないだろうとシカマルが目を丸くすれば、カカシは苦笑いを浮かべた。
カカシには、ナガレの心境がわからなくもないのだ。
カカシ「俺もね、初めは担当上忍なんてするつもりはなかったんですよ」
自分には出来ない。する資格もないと、そう思っていた。
だが。
そんな気持ちも、サスケ、サクラ、そしてナルト……みんなと過ごしていく日々の中で変わっていった。
カカシ「案外、可愛いもんでしょう」
彼らのひたむきなその姿、そして成長を目の前で見れる喜び。それは、胸を熱くさせるものがある。
その姿を、子どもたちのこれからを、見守っていきたいと思った。
ナガレ「………」
沈黙を守るナガレのそれが、暗に肯定を示していた。
そして、そんなナガレに、怒りで肩を震わせる者がいた。
シカ「……っ、ざけんじゃねぇ……! なんだよそれ、ならなんで!!」
これだけの事をしておいて、キリに背負わせるだけ背負わせて、今更そんな戯れ言を。
シカ「ぜってぇ許さねぇ」
流さなくていい涙を、キリがどれだけ流してきたと思っているのか。
失われた命だって、もう戻っては来ない。
どれだけ時が経っても、ナガレが仕組んだ事だったとしても、キリはそれを一生背負って生きていくのだ。
ナガレ「……許して欲しいなんて、少しも思っていないよ。もし過去に戻っても私は、キリにもう一度同じ事をする」
シカ「てめぇ!」
ガッとナガレの横っ面を殴りつけたシカマルは、そのままナガレの胸ぐらを掴んで、またその顔を強く殴り付ける。
更にこぶしを振り上げた時、それはカカシによって制止された。
カカシ「シカマル」