第83章 ヒーロー
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シカマルとカカシのやり取りを聞いて、ナガレは考えを巡らせる。
どうやら、シカマルが言うにはキリは今眠っているらしい。
まさか、こんな少年一人に、キリが抑えられるなんて思いもしなかった。
ナガレ(……キリ無しで、突破するのは不可能だね)
仮にこの場を抜けたとしても、この里を出るまでは出来ない。
ふぅっと、息をついて両手を上げると、ナガレは降参の意を示した。
ナガレの指示を待っていた手駒達も、ナガレに従って、大人しく拘束を許す。
体を起こす際にナガレは、気を失ったイチカに目を向ける。
しばらく起きそうにないイチカは、薬の影響か、血を流し過ぎたのか、それとももう限界だったのか。
その目には涙の跡があって、そういえばイチカの涙はいつぶりに見たかな、なんて考えが頭によぎった。
シカ「っ!! おい、すげぇ怪我してんじゃねぇか!!」
ナガレの体が離れた事で、見えたイチカの血の海。シカマルはイチカのもとへと駆けつける。
早く治療をと、慌てるシカマルだが、カカシはそれを制止する。
カカシ「心配しなくても、傷はもう塞がってるよ」
それに修復も始まってると告げられて、シカマルが再びイチカを見ると、なるほど言われてみれば、大きな傷跡からはもう血は流れていないように見えた。
カカシ「下手に医療忍術を使うよりも、このまま自然治癒に任せた方がいい。……そうですよね?」
ナガレ「………」
何も言わないナガレに、カカシは重ねる。
カカシ「さっきこの子に打った注射は、治癒能力を高めるものだったのでは?」
シカ「!」