第83章 ヒーロー
カカシの影分身と暗部は互いに刃を合わせたまま、ピリピリとした空気が漂う中。
カカシは目を細めた。
カカシ「ここは俺の顔に免じて退いてくれない?」
この場を預けて欲しいと、へらりと笑えば。
その場違いな笑顔と声のトーンに、毒気を抜かれた暗部は、ため息と共に忍具をしまい込んだ。
『……はぁ、わかりました。殺さずにこのまま拘束します。それでいいですか』
カカシ「悪いね、助かるよ」
カカシ(さて、と……)
同じようにクナイをしまったカカシは、くるりと振り向いた。
そして先ほどここに到着し、まるで状況を飲み込めていないシカマルのそばへと移動する。
カカシ「シカマル」
シカ「……なんでカカシ先生が、木ノ葉の暗部と戦ってるんすか」
今見た光景に、シカマルは理解が追いつかない。
急いでイチカたちの援護に来てみれば、何故か味方であるはずの木ノ葉の暗部と、カカシが刃を交えていて。
それに、この状況で最も理解出来ないものに、シカマルは視線を向ける。
間違いでなければ。ナガレが傷付いたイチカを守るために、自らの体を盾にしているように見えるのだ。
その不可解な光景に、疑問符を浮かべていると、カカシは眉を下げて苦笑して見せた。
カカシ「……ま、大人も色々複雑ってことかな」
シカ「は?」
意味がわからないと、なおさら首を傾げるシカマルにもう一度苦笑して、カカシは本題に入った。
カカシ「その様子じゃ、キリは大丈夫そうだね」
シカマルはぼろぼろになっているが、今ここに来て、冷静な対応をとっていることから、キリの方は上手く事を収めたのだろう。
シカ「あー、とりあえず今は落ち着いて……」