第83章 ヒーロー
シカ(っ……)
立ち上がろうとしただけで、ズンとのし掛かる身体の重さに、思わず身体をふらつかせる。
鉛のような身体に鞭を打って、シカマルは再びイチカと別れた場所へと急いだ。
そして、たどり着いた先で見た光景に、シカマルは呆然と立ち尽くすほかなかった。
…………………………
一方、シカマルたちが去った後、イチカ達は苦戦を強いられていた。
イチカ「っ、はぁっはぁっ」
こちらの戦力は奪われ、もはやその場に立っているのはイチカのみ。
他の仲間たちは全員、すでに地面へと伏していた。
あまり自ら積極的に戦闘に参加しないナガレを除いて、三人の忍と、たった一人で戦っているイチカの呼吸は荒い。
イチカ「……っ」
ちらりと周囲を見渡しても、仲間が起き上がる気配は感じられない。
連れてきた仲間たちは、イチカの知る限りで精鋭部隊だった。そんな仲間たちは、力を発揮することも出来ずに、みんなやられてしまった。
どれだけ戦う意思があっても、ナガレの声と鈴の音に反応して、動きが止まる。
そして、その間に倒されていく仲間たちは、敵からすれば、どれだけ容易かったことだろう。
イチカ「……まったく、泣きたくなるわね」
戦いの最中に、敵から動くな止まれと言われて、止まる馬鹿がどこにいるというのか。
そして、イチカたちはそんな馬鹿の集まりだったのだ。
満足に戦えずに、見えている攻撃すら避けずにただやられるだけ。歯向かう事が出来なくて、そんな飼い慣らされた犬のような自分たちは、どれほど滑稽なことか。