第83章 ヒーロー
シカマルは土遁の印を組み、キリを狙って術を繰り出すが、あっさりと避けられる。躱されたその場に、等身大の土が盛り上がった。
シカ「だいたいよぉ」
それを何度か続けて、あたりには九つほどの土の塊が出来た。
シカ「ヒーローって柄じゃねぇんだよな」
そんなシカマルでも、まだまだ子供の頃。
やっぱり男なら一度は、かっこいいヒーローに憧れる時代はあるもので。
ヒーローといえば、正義の味方で、困っている者の所へと現れては、派手な必殺技で敵を倒していくものだ。
だが。
シカマルの必殺技は如何なものだろう。
奈良一族の秘伝忍術といえば、知っての通り陰遁に基づいた影を操る術で。
見るからに地味で、派手にドーンと敵をやっつけてしまうような必殺技とは、程遠いところにある。
そしてシカマル自身も、上手くサボる事に力を入れた幼少時代。
努力が好きなわけではないし、やらなくていいのなら、やりたくない。
力が強いわけでもないし、速さが優れているわけでもないから体術は得意じゃない。
目立つ事に興味はないし、熱意もない。
他の誰かがやってくれるのならば、それは自分じゃなくていい。
それらを照らし合わせて、なるほどなるほど。そうか自分はヒーローになる器ではないらしいと、幼心に気が付いた。
世の中、きっと適材適所というものがあるのだ。
だってそうだろう。物語の中に、ヒーローばかりいては、そいつも埋もれてしまってヒーローにはなれない。
村人1やクラスメイト1がいるから、そいつだってヒーローになれるのだ。
そして、シカマルは物語でいえば、クラスメイト3といったところだろうか。