第83章 ヒーロー
キリ「!」
ざさぁっと二人して派手に地面に倒れ込んで、シカマルは暴れるキリの腕ごと、抱きしめるようにして動きを止める。
シカ「っ!」
両腕を拘束し、がっちりと押さえ込んでいるにもかかわらず、キリの上体が起き上がりかけて、シカマルは叫んだ。
シカ「おい! 早く逃げろ!!」
『『!!』』
身を縮めたまま呆然としていた少年と、それを見て立ち竦んでいた少年。
シカマルの声に反応したのは今しがたキリから攻撃されそうになっていた少年で、立ち上がろうとするが、何度も失敗してそれが出来ないようだった。
シカ(怪我は……ないみてぇだな)
ひとまず、少年に大きな怪我がないことに安堵する。
しかしながら、突然のことに腰が抜けて、立つ事が出来ないらしい。
シカ「ぐっ!」
ぐるりとシカマルとキリの位置が入れ替わって、上下が逆になる。
そして膝を立てて立ち上がろうとするキリに、シカマルは痛む肋骨も気にかけず、力いっぱいキリの体を振ると、キリの体は再び地面についた。
シカ「させるかよ!」
バタバタと激しく入れ替わる二人に、砂埃が舞う中で、少年たちは身動きが取れずにいた。
ぷるぷると身体を震わせて、立ち上がろうとする少年の腕の力が、かくりと抜ける。
そのまま、べしゃっと地面に伏した少年は、立ち竦んでいる友人へと顔を上げた。
『さ、先に逃げて!』
シカ「!」
『今、動けないからっ、だから』
『で、でも』
『は、早く! 逃げて!』