第83章 ヒーロー
シカ(誰だ!? 誰がそこにいる!?)
イチカが書き記して呼んだ木ノ葉の連中なのか。それならばいい。
偵察に来るともなれば、忍としてそれなりの力がある者だ。
だが、この先にいるのが、戦いの心得がまるでない一般人であればどうなる。
キリが木ノ葉で、無抵抗で力の無い一般人を傷付けた、最悪……殺したとなれば。キリはもうここで生きていけない。
ただでさえ、いまだにキリに猜疑心を抱き、同胞殺しで親殺しだと嫌悪している者がいるのだ。
木ノ葉でキリが一般人に手をかける事があれば、その者たちは総出でキリを追い込み、責め立てるだろう。彼らはどんな事情を話したところで聞く耳を持ちはしない。
そして、キリも間違いなく、そんな自分を許さない。
その事実が出来てしまった時点で、キリは終わる。
木ノ葉で出来た二度目の傷は、きっと癒える事はないだろう。
シカマルが戦っている時よりも。その殺意がシカマルに向けられている時よりも、ずっと嫌な汗が背筋を伝った。
シカ(くそ! 遅ぇっもっと早く……っ!!)
差が縮まらず、鈍足な自分を恨んだ。
【あ゛ぁぁぁぁっ】
「うわぁぁああ!!」
シカ「っ!!」
聞こえてきた叫び声に、どくりと心臓が嫌な音を立てる。
ようやく、そこにシカマルが追いついた時に見えた光景。
そこには地面に横になり、頭を抱いて身を震わせている少年と。今まさに少年へ刀を突き立てようとしているキリの姿があった。
シカ「うぉぉぉおっ!!」
走ってきた勢いのまま、なりふり構わずに、シカマルはキリの腰もとに飛び込んだ。