第83章 ヒーロー
再び向かい合うシカマルとキリ。
シカマルは、一、二、三と続くキリの攻撃を受け、流して、避ける。
そんな中で、良かったと思った。
キリとこうして、何百、何千の時間を過ごしていて。
数え切れないくらい手合わせをして。
周りのみんなが、今日は久しぶりに休みだと、遊びや休息を楽しんでいる中、馬鹿みたいにキリと修行に明け暮れていて。
本当に良かったと、心の底から思う。
もしこれが一年前であったなら、きっと。シカマルはまるで相手にならなかった。
これが、今で、良かった。
キリに、何があっても同じ道を歩ませたりはしない。
シカ「っと……」
シカ(危ねぇ、けど)
キリからの攻撃を躱したシカマルは、確信する。
確かに、キリの能力は上がっている。
攻撃速度や、反応、力、そういった単純な能力は向上している。
だが。
シカ(これなら、戦える)
確かに恐ろしく速いが、急所のみを狙った単調な攻撃。
狙いがわかりやすい分、避けやすくもある。
シカ(普段のキリの方が、よっぽどやりづれえっての)
シカク仕込みの憎たらしいフェイクや、お前それは無理だろうという意味のわからない体勢から繰り出される人間離れした攻撃。
それらが一切ない今のキリを、強くなったとは思わない。