第82章 親友
その時ーー
『ぐぁっ』
シカ「!」
突如、敵は横に吹っ飛んでいき、シカマルの視界から消えた。
そうなったのは、自分の身体ごと敵に突っ込んだイチカが原因だった。忍に馬乗りになって押さえ込んでいる。
イチカ「追って! 早く!!」
シカ「っても、お前らあいつの」
ナガレに強制的に従わされるイチカ達だけを置いていけば、イチカ達の命も危険だろう。
それを懸念していれば、イチカの怒号が飛んだ。
イチカ「あんた何しにここにいるつもり!? 私達はあんたに守ってもらうために、ここに来たんじゃないわよ!!!」
シカ「~っ」
シカマルがキリの方へと視線を向けた瞬間。
イチカ同様に身体を張って敵に向かっていった樹の里の皆によって、道が切り開かれる。
その好機を逃さずに、敵陣を抜ければ、すかさずナガレの命令が下った。
ナガレ「動くな」
リンと奏でる愛らしい鈴の音が、この戦場に酷く不釣り合いだった。
それに反応を示した隙に、シカマルを追おうとする面をつけた忍たち。
イチカ「~っ、舐めんじゃないわよ!」
刹那、激しい爆発音が鳴り響いて、シカマルはその爆風を感じながら後ろを振り返る。
シカ「あの馬鹿!」
すぐに粉塵の中から、樹の里の5人とイチカが立っている姿が見えて、シカマルはひとまず胸をなでおろした。
イチカは、自滅寸前の至近距離で起爆札を放ったのだろう。それもあれは、一枚などという可愛らしい枚数ではない。
シカ「っ、無茶しやがって」
左腕を血だらけにしながら、咆哮と共に敵に向かっていくイチカの覚悟を見て。
前方へ顔を戻したシカマルはキリのみに視線を定めて、強く地面を蹴り上げた。