第82章 親友
自らの意思よりも早く、反射的に体が鈴の音に従った。
それは、樹の里の他のみんなも同じだったようで、それぞれがその対応に追われていた。
援護に回るシカマルは、この奇妙な状況に頭をひねる。
シカ(なんだ? あの鈴になんかあんのか?)
そういえば、キリがナガレに命令を受けた時、鈴の音がしていた。
そして、その命令をきっかけに、キリはシカマルへと刃を向けたのだ。
あの鈴の音が、キリの理性を保てなくする最後の鍵だった。
考えがそこに行き着いたシカマルは、顔を歪ませる。
シカ(……となると、やべぇな)
何故そうなるのかはわからないが、今はそこは重要ではない。
とにかく、ナガレは樹の里の忍を従わせるすべを持っているということだ。
そばにいるキリが、見境なくナガレ達を攻撃しないのも理性が残って判断しているというよりは〈命令を聞いて〉そうしているのだろう。
先ほどのナガレの命令に、樹の里の5人は束の間であったが、完全に一度停止した。我に返るのが早かったイチカも、ぴくりと数瞬動きを鈍らせた。
シカ(やられるには十分だ)
その隙は優劣を覆すのに十分過ぎる。向こうはお釣りがくるレベルだろう。
そんな中で、再びナガレの持つ鈴は鳴る。
ナガレ「キリ、予定が変わった。先に行きなさい。次の指示まで、目の前に現れた人物全てを斬っていい」
シカ.イチカ. 「っ!!」
命令を受けて、キリはナガレが指をさした先、木ノ葉の中心部を目で追った。
シカ「キリ!」
イチカ「キリ! 駄目!!」
その制止には聞く耳も持たずに、キリは中心部を目指して、地面を蹴り上げた。
シカ(まずいっ、このままじゃキリが……!)
キリの後を追おうにも、シカマルは面をつけた忍と交戦中で。
そうこうしている間にも、キリの背中が離れていくのが見える。