第82章 親友
ナガレ「ここまで知られては、里に戻ってからが困るからね。残念だよ」
イチカの声に、反射的に攻撃体制を整えた一同は、各々ナガレたちに忍具を構えた。
イチカ「始末なんて、させるわけないでしょーが! それに、あんたの許可なんて要らない。力尽くで奪い返すだけ。キリは、私の親友よ」
特攻するイチカが吠えて、それに続く一同。
こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。
…………………………
混戦中になったイチカたちの戦況は、わずかに優勢に見えた。
残る敵の数は、面をつけた忍が3人とナガレとキリ。
対してこちらは、イチカとシカマル、そして樹の里から助っ人5人。
数ではこちらが押している。
シカ(っ、すげぇな)
シカマルが輪の中にいて感じたのは、樹の里メンバーの高いチーム戦スキル。
前衛後衛、くるくると入れ替わるそれは、どれもその時の最適な動きになっていた。
頻繁な入れ替わりをしても、どこにも不備が出ない。
その最前線にいるイチカは、少し荒くなった呼吸で、周囲を見渡した。
イチカ(大丈夫、ね)
こちらに大きな負傷は未だない。
樹の里は、決して大きな里であるわけではない。先進国であるわけでもなく、里としての地位も高い方ではないだろう。
だが、イチカたちは物心つく前から、同じ施設で寝起きを共にして過ごしていた。
誰が、どんな戦法を好み、逆に何が苦手なのか。そんなものは熟知している。
だからこそ、チームワークという点では、どこの里にも劣りはしないと言える自信がある。
そして、ナガレが戦闘に特化した人物ではなかったことが、大きな利になった。
その昔、軽く手合わせなども教えてくれたナガレは、それなりに戦うことが出来るようだが。
しかし、ナガレは戦いに重きを置いた人生を送っていない。
研究に、人生をかけた人物だ。
ナガレが攻め込まれた時に、フォローに入る忍たちさえ、どうにか出来れば、こちらに勝機がある。