第82章 親友
そんな中で、その怒りを向けられているシカマルは、背中に冷たい汗を流していた。
シカ(……やべー)
隣から感じる怒気に、怖くてそちらを見ることが出来ない。
あくまで一人一殺は目標で、無茶や深追いしないを前提としていたが、この感じを見ればイチカはやり遂げたのだろう。
シカマルもそうするつもりだったのだが、その、なんだ。少し言い訳をすると。相手と本当に、非常に、相性が悪かったのだ。
イチカがこんなにも、怒るということはだ。
シカマルは出来ると、そう思ってくれていたということだ。
キリには到底及ばないだろうが、シカマルにもそれなりにしてくれていた信頼を、ぺろっと裏切ってしまったことが申し訳ない。
だが、こちらにも目立った負傷は見えない。
ノルマこそこなせなかったが、充分な結果だと言える。
もとより、この奇襲で決着をつけれるなんて思ってもいない。
シカ(勝負はこれからだ……!)
『はぁっはぁっはぁっ』
シカマルはチーム内で一人、浅い呼吸でどこか浮き足立っている者がいる事に気付く。
同じように気付いたイチカが声をかけた。
イチカ「どうしたの? 怪我をした?」
その言葉に、そいつは「してない!」と、ぶんぶん首を振って必死に否定する。
『あっ相手が、キリ姉だった』
イチカの声かけで、自身を落ち着かせようと努めながら、でも無傷だと強く主張する。
イチカ「偉いわ、その調子でいくわよ」
無傷報告に微笑むイチカ以外は、呼吸を乱しているそいつの緊張やプレッシャーが痛いほどに理解出来た。今すぐ、拍手と共に褒めてやりたいくらいだ。