第82章 親友
全方位から攻撃を、クナイを投げたところで。キリは避けるから大丈夫だと即答したイチカは、キリの戦闘能力を信じている。
離れていても、ブレることなく絶大な信頼をキリに置いているのだ。
シカ「俺が行く」
その覚悟を持って、キリを必ず止めて、取り戻す。
ハッキリとそう告げれば、イチカはふと笑みを浮かべた。
イチカ「早く行くわよ」
…………………………
そうして。
シカマルの特攻を合図に、イチカ達はナガレ達への奇襲を仕掛け、一同は煙の中で混戦状態となる。
イチカ(よし、一人!)
敵の首へ渾身の力で手刀を入れてやれば、ノーガードでそれを受けた敵は、意識を手放した。
一人一殺の目標を達成したイチカは、続けて近くの仲間の戦闘に加担する。
優勢ではあったが、風の流れを感じて、イチカは顔を歪ませた。
目くらましの煙がなくなる前に、もう一人。
イチカ(あと少し待って、せめてこいつだけでも……!)
息もつかぬ連撃を続け、イチカの小刀が深く、相手の肩から腹の近くまで身体を抉った。
イチカ(あと一押し!)
そんなところで、無情にも風が煙をさらっていくのが見える。
『イチカ姉っ』
イチカ「くっ……駄目、下がって!」
『了解』
あと一歩ではあったが、煙という盾をなくしたイチカ達は距離をとる。
イチカ「はぁっ、ふー……」
短時間での連打に呼吸を整えながら、周りを見た時。
イチカは、怒りで口角をヒクつかせた。
倒れている敵は一人。あれはイチカが先ほど倒した相手だ。
となれば、あの男はどうした。おい、一人一殺ではないのか。
イチカ「ちょっとあんた! ふざけんじゃないわよ!」
声を荒げれば、シカマルからバツの悪そうな謝罪が聞こえてきて、イチカはこめかみに筋を浮かべた。
あれだけ、道中で必ずやると言っていたのにも関わらず、これは一体どういうことだ。
もちろんイチカも、必ず仕留めるつもりだった。
イチカ(私とあんたで、最低二人は終わらせるつもりだったのに……このっ)
ふつふつと怒りが湧いて、イチカは拳を震わせる。