第82章 親友
そして、それと同時に、シカマルは良かったと思った。
以前あったキリとロック・リーのやり取りでは、シカマルに味方はおらず敵しかいなかったが、今回周りには味方しかいないようである。
やはり皆がそうなわけではない。
天才肌というのか、実に獣的な感じ方をしているこいつらの方が異常なのだ。
うんうんと、シカマルも心の文句を唄っていれば、そうこうしている間にどうやら完全に止血を終えたようで、医療忍者はシカマルから手を離した。
『よしっひとまず傷は塞がったよ』
「完治したわけじゃないけど」と告げられたそれに、シカマルは礼を返した。
シカ「さんきゅ、充分だ」
イチカ「じゃあ行くわよ。心配しなくてもキリの相手は私がする。でも、みんなも機会があれば迷わず掴んで」
班員は全員頷いてくれた。そして、イチカはシカマルに鋭い視線を送る。
イチカ「あんたがそんな甘い策しか出せないほど使えないなら、私たちでやるからいいわ。下がってなさいよ」
シカ「っ」
そんな心積もりでは邪魔なだけだと、シカマルに告げて、足を進めるイチカ。
すると、後ろからパァンっと軽快な音がして、イチカはその音の方へと振り向いた。
そこには、自身の両頬を思いっきり張ったシカマルがいた。シカマルは続けて拳を握り、両足と胸に、ドン、ドンッと気合いを入れていく。
シカ「~っし。イチカ、悪かった」
イチカ「………」
馬鹿なのは、シカマルの方だった。
助けたいという気持ちはもちろんあったが、戦う覚悟が足りていなかった。
シカマルは〈好きな女〉を助けに行こうとしていたのだ。
でも、キリはそんなに生易しい人物ではない。キリは敵に回せば、非常に厄介な戦闘能力を持っている。
〈キリが傷付いたらどうする?〉
確かに馬鹿げた提案だった。頭の悪い発言のこの上ない。
イチカは、キリを信頼しているのだ。
シカ(……親友ってのはやっぱすげぇな)
そう思わされて、少し悔しい。