第82章 親友
『そ、そのなんかキリの攻撃避ける、回避のコツ? とかないの?』
『そうそう、イチカが一番キリとやり合ってるし』
さすがにイチカの方が分は悪いが、樹の里の同世代で、唯一キリと渡り合えるのはイチカだけだ。
おそらく臨機応変な対応が求められるこれからの戦闘に、そんなアドバイスは気休め程度かもしれないが、ないよりはマシだろうとそう問えば、イチカは即答する。
イチカ「そんなもん気持ちで避けなさい。根性でどうにかなるわよ」
シカ.一同(ならねーよ)
初対面で言葉もまだまともに交わしていないシカマルと、樹の里のみんなの心が、ひとつになった瞬間だった。
『根性でどうにかするには、キリ姉は速すぎるよ。攻撃が見えない時あるもん』
気持ちでどうにかするにも、限度がある。そう思って愚痴をこぼせば、イチカは首を傾げた。
イチカ「見てから避けるからでしょ? 感じたら避けなさいよ」
『『『……………』』』
シカ(……こいつもこのタイプか)
このやり取りに、シカマルは酷く既視感を覚えた。
シカマルは以前にも、この会話をして、こんな風に衝撃を受けたことが確かにある。
イチカも感覚で、本能で戦うタイプなのだ。
キリと違って見えるが、さすがキリの親友というのか。似ているところがあるのだろう。
そして、間違いなくイチカもロック・リーと仲良くやれる。というか、互いに波長が合う類の人種だろう。
《出たよこれだよ》
《気休めどころの話じゃねぇ、それ以前の問題だ》
《……たまに言葉通じなくなるのなんでだろ》
《見えてもないのを感じるってなに? 超能力? イチカ姉は超能力者なの?》
《根性で勝てるもんなら今頃私無敗だわ》
わかる。シカマルにもよくわかる。
決して言葉に出してはいないが、皆が思っているそれは、ひしひしと伝わるものがある。