第82章 親友
まずは煙玉で相手の視界を奪う。
そこへ全方位からの飛び道具で攻撃を仕掛け、それぞれ最も身近な敵を標的にし、可能な限りで一人一殺を目指すと、イチカは提案する。
シカ「奇襲時に一人倒すのを目標にすんのに異論はねぇ。でも飛び道具は無しだ」
イチカ「は? なんでよ、少しでも相手の戦力は削いでおくべきだわ」
眉を寄せるイチカに、シカマルも眉を寄せて返答する。
シカ「敵の中には、今キリがいるだろうが」
そう。シカマルたちの相手は敵だけではない。今はキリがいて、そんな中で無闇に攻撃などを繰り出して、キリが負傷してはいけない。
イチカ「……それだけ? それ以外の理由は?」
そう返すイチカに、それが理由だと言えば、イチカはさらに眉根を寄せた。
イチカ「なら、この作戦のままいくわよ」
シカ「は? おい待て勝手に進め……っ」
ため息と共にそう言って、作戦の続きを話し始めたイチカの腕を掴めば、イチカは苛立ちで声を波立たせた。
イチカ「あんたね、一体何の心配してんのよ!?」
だから今、敵陣にはキリがいるだろうと言おうとした時、イチカから掴んでいた腕を払われる。
イチカ「そんな心配しなくてもキリなら避けるわよ。問題ないわ」
一体なんて根拠のない回避策をあげるのだと言えば、逆にイチカから、お前は何を言っているのだという顔を返される。
イチカ「キリがそんなヘマするわけないじゃない」
絶対的自信を持って断言するイチカに、なんだかこちらまでそんな気持ちになってきて、シカマルは反論を飲み込んだ。
イチカ「万が一、キリがそれで怪我したとしても後で謝ればいいでしょ!」
シカ「謝るって……お前なぁ」
呆れたようにそう言えば、イチカは鋭い視線をシカマルに送る。
イチカ「あんたさっき、キリは薬を打たれたってそう説明したわよね」