第19章 あの頃の記憶
二度の襲撃経験から、おそらく相手は同じ人物だと推測している。その男は気配の断ち方はそこそこであるが、それにも隙が垣間見れる。
決して弱くはないだろうが、先手さえ取られなければ、大事には至らない相手のように思えた。
しかしキリ最大の失態は、この後だ。
シカクから今回の事を問いただされた際。
油断と少し気が動転していたこともあって、シカクへの対応に粗が出てしまった。
過剰な心配をかけた結果、共同生活を余儀なくされ、こうしてキリは奈良家で朝を迎えているのだ。
どこかで一つでも、キリは正しく対応出来ていれば、こうはならなかったはずである。
はぁ、とため息をついてから、昨日キリのためにあてがわれた部屋を後にして、居間へと向かう。
ここで生活をするにあたって、特別なにかをしろとは言われていないが、いくつか決まりはある。
「朝目覚めたら一度は居間に顔を出しなさい」というそれに従えば、既にシカクとその嫁であるヨシノの姿が見えた。
ヨシノ「おはよう。昨日は眠れた?」
シカク「おう、キリ。おはよう」
そんな二人の挨拶に小さく会釈をして返せば、続いてすぐにシカマルも居間へとやってくる。
シカ「ふぁー、ねみー…」
眠たそうにあくびをして両親、そしてキリにも挨拶をするシカマル。
対してキリは一瞥するのみだったが、シカマルはそれを気にはとめていないようだった。余程眠たいのか、うつらうつらと瞳が閉じていく。
ヨシノ「さぁ、朝ごはんにするから二人とも座りなさい」
キリ(……………)
シカマル、そしてキリも黙って席に着けば、目の前には和食が並べられる。