第82章 親友
シカ「!」
『怪我見せて』
そういって、先ほどのイチカと同じように遠慮なく服を捲り上げたのは、シカマルより少し若い女の忍。口を挟む隙もなく、シカマルは気圧される。
シカ(っ……樹の里の女ってみんなこうなのかよ)
もう少しこう、なにか配慮や恥じらいがあってもいいのではないだろうか。
しかし、そんな馬鹿な考えは今はどうでもいい。自分の傷の治療などしている時間もないのだ。
傷を確認して、治療をするから座るように促されたそれに、シカマルは首を振る。
シカ「今そんな事してる暇はねぇ。早くしないとキリが危ねぇ!」
再び進めようとした足は、イチカによって蹴り払われる。そして、強引に身体を押さえつけられて、強制的にその場へ座らされた。
シカ「おい! 何すーー」
イチカ「なら、なおさら!!」
大声でシカマルの言葉を遮ったイチカは、続く言葉を口にする。
イチカ「なおさら治療が先よ! その傷、致命傷にはなってないみたいだけど、放っておいたら死ぬわよあんた」
止まることなく溢れ出るそれは、もはや左半分を赤に染めようとしていた。
イチカ「キリに、あんたを殺させたいの?」
シカ「!」
イチカ(もう二度と……こんな失敗はしない)
助けられる命をみすみす逃して失うことも、それによってキリがまた罪を背負うことも、絶対にさせはしないのだ。
シカ(……)
ひどく辛そうなイチカの表情が、感情的になっていたシカマルの頭を冷やしていくのがわかる。
イチカ「それに、そんな身体でどうやってキリを助けに行くって言うのよ」
シカ「……悪い。まともな判断が出来てなかった」
ふー、と大きく息をついたシカマルは「治療を頼む」と頭を下げる。