第82章 親友
第82話 親友
信じるべきはキリか、その他の人物か。
その他が、誰であろうと絶対にイチカはキリを選ぶだろう。
離れていようが、喧嘩をしようが、イチカはいつだってキリの親友なのだから。
人のことばかりの不器用な優しさに溢れたキリ。イチカはもう二度と、間違えたりはしない。
二人で抱き合って泣いたあの日、イチカはそう心に強く誓ったのだ。
真相を探っていたある時。
ナガレへ疑念が抱かれていく中で、イチカはいつもあるはずのナガレの姿が見えない事に気付いた。
施設のどこを見渡しても、その姿は確認出来ず、イチカは一抹の不安を覚える。
【ねぇナガレさん知らない? 誰か、見かけなかった?】
その答えは全て、NO。
誰に聞いても首を振る中で、何人かが、少し里を出ると聞いたと言い始める。
【どこ? どこに行ったの!? 誰からその話を聞いたの!?】
すると、誰からかはわからない。小耳に挟んだだけだと、それを知る者は口を揃えてそう言った。
【ナガレさんは一人で里を出たの!?】
それにもわからないと、曖昧な返答がくるばかり。
【っ……】
この何とも言えぬ浮遊感。必ずそこにあるのに、掴むことが出来ないこれは、今日までずっとイチカが繰り返してきたものだった。
調べても、調べても、風に漂うような情報ばかりでその根本は決して現れない。
一体、いつからナガレは姿を消していたのか。
心臓が嫌な音を立てて、警鐘を鳴らした。
〈キリが、危ない〉
直感で、そう思った。早く、早く木ノ葉に行かなくてはいけないと、そんな焦燥感にかられる。