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ささめごと -ながい夢- 【NARUTO】

第81章 迎え





シカ「ゔぇっ、はぁっはっ」

苦しさから生理的に滲んだ涙が、ぽたりと落ちた。


シカ「キリっ、ごほっごほっ」

再び起き上がろうとするが、揺れる視界がそれを遮った。


シカ「くそっ!!」

そんな自分への苛立ちを抑えきれずに、力一杯に地面を殴りつける。

シカ「くそっ!!!! 早く動けっての!!!」

再び胃液がせり上がってくるのを感じて嘔吐したシカマルは、自らの現状に酷く顔を歪ませる。


キリと立ち合った際、最初の抜刀を避けれたのは、幸運だった。

キリの刀を抜く動作は、まるで見えていない。

だが、これまでの経験やキリと過ごした時間が、本当になんとなく、キリならば今だと教えてくれたのだ。


シカ(キリっ……!)


シカマルは、左胸からどくどくと溢れる血に視線を止める。

それは、寸分違わず心臓の位置を刺していた。


シカ(あいつ……)


本来ならば、完全に致命傷だった。

実際に、ナガレも刺さった位置と、クナイの根本までついた血液を見て、致命傷を悟っていた。


シカ(自分の左手を……!)


そんな致命傷から免れたのは、キリが自らの左手を間に置いていたからだった。

そして、クナイはキリの左手を貫通して、シカマルの左胸へと刺し込まれていた。

左手というクッションがあって、クナイはすんでのところで心臓に到達する事はなかったのだ。


そのため、今シカマルが地面にへばり付いているのは、胸の傷が原因ではない。


問題はその後だ。

まともにもらった頭部への衝撃が、決して易しいものではなかった。

目を開ければ、いまだに激しく揺れる視界が、それを顕著に示している。


シカ(………っ)

重度の目眩に吐き気を催し、過去最大に気分が悪い。

だがそれでも、キリはきっと、どこかでシカマルに配慮してくれていたはずだ。


その気になれば、いつだってキリは、その場でシカマルの命をとれていただろう。

歯向かえぬはずの命令に、必死抗ってくれていたのだ。


シカ(早く、キリを……っ)


追わなくてはいけない。

一刻も、早く。


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