第81章 迎え
薬物に耐え切れずに、命を落とした施設の友人たち。
幼い頃から、いつおさまるかわからない激痛に耐え、おさまった頃にまた薬を服用。そんな毎日を繰り返していた。
木ノ葉隠れに来てから、奇襲にあったキリに巻き込まれた人物。
アサヒを含めたアカデミー生や、その時そばにいたシカマル、命を落としたフミ、命を落としかけたシカク。
そして、キリがこの手で。
命を奪った施設の仲間たちと、両親、イチカの父と兄の姿……その全てが頭に浮かんで、悲しいと言えばいいのか、悔しいと言えばいいのか。
溢れ出る後悔と、罪悪感。そして、その事実に絶望する。
その感情は、言葉にはならずにただ涙となって溢れて落ちる。
その時、再びリンと鳴った鈴の音。
ナガレ「キリ、殺しなさい」
ナガレの右手に持たれた鈴は、無邪気な音色を奏でる。
どこか頭の隅で、ああそういえばこの言葉はあの日も聞いたなと、ぼんやりとそんな事を思った。
こちらへ踏み込んできたシカマルに、キリも左、右、と一歩ずつ踏み込む。
シカ「っ、キリ!!」
刀を抜いたキリと、シカマルがキリの名を呼んだのは、ほぼ同時だった。
シカ「くっ……!!」
愛しい人を、キリはまた、殺したいと思った。
鞘から抜くと同時に、払い上げた刀の切っ先は、シカマルの衣服をわずかに裂いただけに終わった。
動くときしむ体が、痛みを叫ぶ。
キリ(痛、い……どうして、私、早く)
ぐるぐると回る思考回路は、すでに正常とは言えなかった。
痛い。悲しい。辛い。疑問。謝罪。後悔。殺意。
それらは、乱雑に現れては消えて、キリの中に巣食っていく。
ナガレ「キリ」
雑多な脳裏に、鈴の音だけがやたらとクリアに響いた。
キリ「あ゛ぁぁぁあっ」
全身がぞわりと粟立つ。
そして、すでに大部分を占めていた感情は、それひとつになり、キリの中が埋め尽くされた。
キリ(殺したい。早く……っ、早く!)
初撃の抜刀術を躱されたキリは、刀を鞘に納め、クナイを取り出すと、そのままシカマルへと飛び込んだ。