第81章 迎え
呻き声をあげるキリの身体が、ガクガクと揺れていた。
そして、咳き込んだかと思えば、大量の血が吐き出される。
キリ(痛い、どう、してっ)
ナガレの言っている意味はわかるのに、何故そんなことをするのか。いや、何故そんなことが出来るのかが、わからなかった。
仲間を大切にしなさい。
自分を大切にしなさい。
そんな教えを、ナガレは一体どんな気持ちでキリたちに説いていたというのだ。
あたたかくキリたちを見守って、育ててくれたナガレの姿が、全て嘘だったのなら。
それを信じてついてきたキリたちは。それで命を落としたものたちは、あまりにも滑稽ではないか。
愚か過ぎて、笑えもしない。
キリ「はぁっ、はっ」
シカ「キリ! どうすりゃおさまる!?」
何か対処法はないのかと言うシカマルに、キリは何とか割れそうな頭で考える。
キリ「わ、たしは……いつも、ただ耐えて……でも、みんなは中、和薬を」
いつも、ただ我が身を抱いてこの痛みに耐えていた。
だが、施設のみんなは時折、中和薬を使っていたところを見たことがある。
シカ(中和薬……!)
その持ち主だろうナガレへと振り返れば、ナガレはじっとキリの様子を見つめていた。
ナガレ「吐血……やっぱり少し薬が強かったかな。まったく、忌々しい。キリが樹の里にいれば、私が被験体に困ることなどなかったのに」
どれもこれも、あの銀髪男がキリを奪っていったからだと、ナガレは顔を歪ませる。
ナガレ「ああ、忌々しいのは銀髪だけじゃないな」
一歩、キリへと足を踏み出したナガレに、シカマルはナガレの懐へと飛び込んだ。
シカ(くそっ……!)
腹部への初撃は、ひらりとナガレに躱された。