第81章 迎え
ナガレ「あの日の薬は、殺人衝動を引き起こすように作られた。ついでに言えば、あの日、精鋭部隊が里外に出ていたのも、私が指示したものだよ」
キリ「そん、な……」
当時、腕の立つものが出払っていたために、キリを止める事が出来る者がいなかった。
それ故に、何人の犠牲者が出たことか。
キリ「っ!!」
ドクンッと、一際大きく心臓が跳ねた。
頭の中に、色々な感情と記憶が重なって、絡まり合う。
キリ「あ、あぁぁ」
あの日、薬物の容量超えで、その副作用で自分はそうなったのだと思っていた。
いつものように薬を飲んで、いつものように耐える事が出来なかった自分が、全て悪いのだと。全ての責任は自分にあると、そう思っていた。
次第に思考がまとまらなくなっていく。
キリ(痛、い、私のせいで、ナガレさんが、……っ)
それが、全て仕組まれていた事だった。
施設に入り、里を守る忍は、里の誉れ。
それに憧れを持つ者、感謝を示す者がいて。両親はそんなキリを栄光高い自慢の娘だと、喜んでくれていた。
キリ(頭が、割れそうっ……私があの日殺したみんなは)
【ほら、キリもおいで】
【大丈夫大丈夫。キリ、大丈夫だよ】
【キリは本当に偉いなぁ】
幼い頃から、優しい笑顔と言葉を向けてくれたナガレの全てが。
【愛しているよ。私の最愛のモルモット】
キリ(じゃあ、私た、ちは何のためにっ)
なぜキリたちは幼き頃から、薬の激痛に耐える日々を過ごしていたのか。
モルモットとして、ただ研究材料として、与えられ続けてきたというのか。
キリ「あ゛あぁぁぁあああっ」
シカ「キリ!!」