第81章 迎え
そんなダイチとキリのもとへ駆け寄ったイツキに、キリはチラリと首だけを振り向かせて、射程距離に入ったイツキの心臓にもクナイを突き刺した。
ダイチ「っ、イツキ!」
イツキ「ぐっ……かはっ」
二人へ致命傷を与えたキリは、次の所へと視線を移した。
キリ「!」
ぎゅっと、ダイチから抱きしめる力を強められて、その後ろからは、イツキからも抱きしめられる。
キリを挟んで互いに目を合わせた親子は、苦笑をして見せた。
イツキ「やっぱキリには勝てないな」
ダイチ「何年も前から、腕相撲すら完敗だったからね」
そんな二人を振り払おうとした時、キリの耳に優しい声が届いた。
ダイチ「キリちゃん、最後にお願いがあるんだ。僕らと、ここに居て欲しい」
イツキ「俺からも、頼むよ」
その言葉に、ぴくりとキリの身体が反応を見せた。
それに、ダイチはふわりと微笑みを見せる。
ダイチ「ごめんね。ちゃんと止めてあげれなくて。この後も、キリちゃんの力になってあげれない」
イツキ「俺も、ごめん。守ってやれなくて。俺たちの事は、気にしなくていいから」
その言葉に、キリの瞳から涙が溢れた。
ダイチ「泣かないで。キリちゃんが全部を背負うことはないよ」
イツキ「ああ、キリが悪いんじゃない」
どこかぼんやりと聞こえるその言葉が、キリの殺人衝動を抑制させた。
ダイチ「イチカもいる。愛情深い子だから、少し時間はかかるかもしれないけど……絶対に大丈夫。だから、これからもイチカと仲良くしてやって」
イツキ「……あいつ、キリのこと凄く、好きだから」
そうして二人は最後まで、キリへ言葉をかけ続けて、どんどん小さくなって途切れ途切れになっていくそれが、最初に聞こえなくなったのは、イツキの方だった。
それを見届けるようにして、すぐにダイチも息を引き取り、ずんっと重さを増した二人に、キリはその場へと座り込んだ。