第81章 迎え
イツキ「なんで父さんまで来るんだよ! 早く逃げて」
イツキは薬物への対応力がなく、施設に入る事が出来なかったが、イチカが施設に入る事が決まった時。
妹だけを戦場へ向かわせるのが嫌で、自ら修業を重ねて忍になった。
だが、父のダイチはただの一般人で、戦いなんて無縁の人物だ。
この場にいては、命がいくつあっても足りない。
ダイチ「イツキだけに行かせるわけにはいかないよ。それに」
イツキ「っ!」
ガキンッとキリの追撃を、イツキがなんとか受け流せば、ダイチはキリを後ろから抱きしめた。
キリ「……」
ダイチ「っ、赤ちゃんの頃からイチカと一緒に居たんだ。キリちゃんはもう一人の娘みたいなものだからね」
娘の一大事に、駆けつけなくてどうすると、抵抗するキリを腕ごと必死に押さえているダイチに、イツキも苦笑いを見せた。
イツキ「俺もそうだよ。可愛い妹を止めに、来たんだっ」
バッとキリの両腕を掴んだイツキは、真っ直ぐにキリを見つめる。
イツキ「ぐっ……キリ、珍しいな。いつもはうちのイチカのお転婆をフォローしてくれてんのにさ」
ダイチ「っ、初めての反抗も新鮮だけど、もう少し小出しにしてくれると助かるなぁ」
抵抗を見せるキリに、二人は更に力を強めた。
イツキ「キリ、もう駄目だやめよう」
ダイチ「うんやめよう。明日僕も一緒にみんなに謝るよ。だから、一緒に帰ろう」
二人掛かりでこんなにも必死で押さえているのに、キリの方が優勢で、ついに拙い拘束は解かれた。
ダイチ.イツキ「「!!」」
解かれた際に、パッと距離をとったイツキと、その勢いに、ぽてんと尻もちをついたダイチ。
そんなダイチの方へ、キリがくるりと振り返る。
イツキ「父さん!!!」
ダイチ「がはっ……」
イツキが足を踏み出そうとした時には、すでにダイチの心臓にクナイが深く刺さった後だった。
イツキ「父さっーー」
ダイチ「っ、キリちゃん」
ドクドクと胸から血を流しながら、ダイチはキリを強く抱きしめる。