第81章 迎え
ナガレ「イチカの家族も随分と余計な真似をしてくれたものだ。キリ、君も理性的過ぎるのはいけないね」
キリ「!!!」
「ああいや、しかし……」とナガレは顎に手を当てて、少し考えるような素振りを見せる。
ナガレ「その理性、心の強さが薬の作用に耐えているのだから、やはり必要だね。大抵の者は、この痛みに根を上げてしまう」
あまり大量に壊せば、里の者が面倒なのだとナガレはため息と共に告げる。
キリ「イチ、カの……家族」
浅い呼吸を繰り返す中で、キリは小さくそう呟いた。
そして、イチカの父と兄との最期の時間が、鮮明に思い返された。
…………………………
樹の里で、事件が起きたあの日。
キリは、湧き上がる殺人衝動のままに、里の人々を殺めていた。
もう惨殺した人物が十を越えようとした頃、騒ぎを聞いたイチカの父ダイチと兄イツキは、キリのもとへと駆けつけた。
イツキ「キリ!!」
ダイチ「キリちゃん!」
自らの名に反応をしたキリは、ぴくりと動きを止めた。
その時、キリは自分の暴走を止めようと追ってきた仲間二人のトドメを刺したばかりで。ずるりと仲間から深く刺さったクナイを抜いて、キリはイッキ達へと振り返る。
イツキ「キリ! もうやめろ!」
ダイチ「おいで、一緒に帰ろう」
キリ「………」
イツキ.ダイチ「「!」」
なんのためらいもなく、二人へ血だらけになったクナイを構えて走り出せば、イツキは父を突き飛ばして、キリのクナイを受け止める。
イツキ「くっ……!」
ダイチ「イツキ!」
止め切れずに、体を宙に浮かせたイツキはそのまま地面へと叩きつけられたが、なんとか受け身を取って立ち上がり、イツキは再びキリと向かい合った。