第81章 迎え
シカ「キリっ!!!!」
バッと、キリをナガレから奪い返せば、キリは腕を抑えてその場に座り込んだ。
キリ「っ……」
シカ「てめぇっ! キリに何しやがった!!」
ナガレの胸ぐらを掴み上げたシカマルには、目もくれずに、ナガレはにっこりと笑みを浮かべてキリを見つめる。
ナガレ「キリ、それは君のために調合した薬だよ」
キリ「くっ……う」
異物を体内に取り入れたことで、ドクドクと鼓動が異常な速さで、音を鳴らし続ける。
ナガレ「あの日以来、研究を重ねたんだよ」
キリ「あの、日……?」
呼吸が浅くなる。熱をもった腕から、それは次々と伝染されていくのを感じる。
ナガレ「そう、キリが里のみんなを殺戮したあの日! あれは素晴らしい革命だった!」
そう告げたナガレは、シカマルの身体を乱暴に突き放せば、恍惚な表情を見せた。
ナガレ「人数をものともせず、殺戮を繰り返すあの姿は実に美しかったよ。キリの能力も、桁違いに跳ね上がり、私の調合は寸分違わぬ出来に仕上がった!」
キリ「………?」
懐かしいこの薬の痛みや感覚に、耐えるのが精一杯で、だから。
ナガレの言っている意味が、理解出来ないのだろうか。
痛いほどに、自らの身体を抱きしめても、まるでおさまってくれない身体中の痛みが、正常な思考を妨げているのだ。
だから。
ナガレの言うそれが、まさか、なんて。そんな有りもしない考えが、頭をよぎってしまうのだろうか。
ナガレ「効果も、持続時間も充分だった」
「それなのに」と声を低くしたナガレは、不愉快そうに顔を歪めた。
ナガレ「邪魔が入ってしまったんだよ」
シカ「てめぇっ……」
今にもナガレに殴りかかろうと、拳を握りしめたシカマルの後ろから、呻き声が聞こえる。
キリ「っ、あ……っ」
シカ「キリ!!」
すぐに駆け寄って体を支えてやれば、小刻みに震えているキリは、じっとりと大量の汗をかいていた。