第81章 迎え
ナガレの眼差しと言葉に、どくりと心臓が嫌な音を立てた。
最近は、本当に色々あった。
キリのせいで、シカクは重症を負うことになったり。
居心地の良かったシカマルの隣が、苦しいものに変わったり。
ふと、イチカの笑顔が頭に浮かんだ。
自信に満ちた勝ち気なイチカのその姿に、つい樹の里に帰ってしまおうか。なんて考えが頭をよぎる。
それでも。
キリ「……私は、樹の里には帰りません」
ナガレ.シカ「!」
自分でも驚いた。
樹の里へ、帰ろうかなんて選択肢が頭に浮かぶほど、どうやら弱っていたらしい。
キリ(もともと、もう二度とあそこへは戻れないと……思ってた)
刀一本手にとって、家を出たあの日。
それが最後になると、そう思って背を向けたのだ。
キリ(それに、もし……)
いつかまた、あの地を踏むことが叶うのならば、それは、人に連れられてではなく、自分の意思でそうしたい。
キリ「今はまだ、帰れません」
木ノ葉隠れの里は、確かに逃げた末に辿り着いた場所だった。
それでも、ここにはキリが、失くして、貰って、築いてきた日々がある。
たくさんの優しさとあたたかさを与えてくれたここを、今。キリは確かに愛している。
もうひとつの故郷と呼べる場所が出来た気がするは、本当に幸運で、いつかバチが当たるかもしれない。
キリ「ナガレさんありがとうございます。帰ろうと言ってくれた事、本当に嬉しかったです」
それは、キリの身に余るぐらいの勿体ないお誘いだ。