第81章 迎え
なにせ、キリにとっては突然過ぎる訪問だっただろう。
普段、こちらが聞けば答えてくれるが、キリの口から樹の里の話が出ることは、まずないと言っていい。
たまに、イチカの話題が出るぐらいで、それ以外ともなると本当にないのだ。
それは、キリにとって樹の里のことは、まだ話すことが出来るものではないということを指している。
キリがそれを気軽に口にする事を、自分自身許せないのだろう。
ナガレ「キリとは久しぶりに会ったからね。少し遠慮してもらえると有難いな」
ナガレの心境ももちろんわかる。
だが、キリには同郷の知り合いと、突然二人きりで過ごすよりも、シカマルが居た方が少し緩和材の役割が出来るのではないか。
シカ「まあ案内なら、俺の方がよく知ってるんで」
ナガレ「……そこまで言うなら、お願いしようかな」
引かない事を悟ったのか、はたまた時間が惜しいのか。承諾したナガレに、シカマルは修業用の忍具を全てしまい込んだ。
…………………………
【……そこまで言うなら、お願いしようかな】
そんなナガレの言葉に、キリはホッと胸をなでおろした。
キリ(………)
ナガレに案内を頼まれた時、それは無意識だったのだが、シカマルに助けを求めてしまった。
ただ、ほんの一瞬、視線を向けただけのSOSを見事に拾ってくれたシカマルに、キリは心の中で苦笑する。
そして、シカマルも一緒に来てくれる。
それが随分とキリの心が軽くしたのが自分でもわかって、キリはなおさら苦笑いを強めるしかなかった。
キリ「あの建物が、木ノ葉の最中心部です」
〈火〉と大きくかかれたその建物は、木ノ葉隠れを統べる綱手の火影室や、上忍待機所、木ノ葉一の書庫など、様々な重要施設が建設されている。
ナガレ「へぇ、やはり五大国ともなれば立派なものだね」