第81章 迎え
キリ「……っ」
まるで親のような言動をすりナガレを見て、あの日の光景が鮮明に蘇るキリは、片膝をついてナガレにこうべを垂れる。
ぎゅっと目を瞑って、痛いほどに拳を握りしめているキリに、ナガレは柔らかな声音を崩さないままに問いかけた。
ナガレ「キリ、どういうつもりかな。頭を上げなさい」
キリ「申し訳、ありませんでした……私のせいで……樹の里の、みんなが」
罪悪感に押しつぶされそうなキリの姿に、ナガレはキリの前に同じように膝をついた。
キリ「!」
ぽんぽんと、ナガレによって優しく撫でられた頭。キリは、はじかれたように顔を上げれば、穏やかに目を細めるナガレの姿が見えた。
ナガレ「大丈夫。大丈夫だよ。よく頑張ったね」
キリ「っ……」
それは、施設にいた頃、ナガレが何度も何度もキリに繰り返しかけてくれた言葉だった。
その瞬間、色々な事がキリの頭をよぎって、思わず涙腺が緩む。
キリ(私は、また許されるの……?)
イチカだけではなく、ナガレまでがキリを許すというのだろうか。
ナガレ「そんな顔しないで。ゆっくりと積もる話もあるけど、残念ながらあまり時間がない。まずは、キリがお世話になったこの里を案内してくれるかい?」
キリが今までどんな生活をしていたのか教えて欲しいと。
ナガレは、涙をこぼしそうなキリの頬をそっとなでて、困ったように微笑んだ。
キリ「……っはい」
こくりと頷いて、ごしごしと今にも溢れそうだった涙を拭ってから、キリは先ほどまで共に修業をしていたシカマルへと視線を向ける。
シカ(俺のことは気にすんな)
すぐにそんなアイコンタクトをくれたシカマルに、心の中で礼を告げて、キリはナガレと共に立ち上がった。
キリ「案内人には、力不足かもしれませんが」
ナガレ「はは、それでも構わないよ」
「行こうか」と、告げたナガレに頷いたキリから、ほんの一瞬視線が送られた。
シカ「……あーそれ、俺も一緒に行っていいすか」