第81章 迎え
第81話 迎え
あの広場公開大告白騒動から、数日が経った。
そんな中で、形が変わってしまうのではないかと思っていたシカマルとキリの関係は、覚悟していたほどの変化は見られなかった。
壊れてしまうと思っていたそれは、今も維持されている。
キリは相変わらず、ご厚意に甘えてたまに奈良家へ足を運んでは、ヨシノの作った食事を食べたり。
リハビリも完全に乗り越えたシカクと、修業を行ったり。
そして。
シカ「キリ、修業行くのかよ?」
キリ「ええ」
シカ「俺もいいか?」
キリ「構わないわ」
張本人であるシカマルとも、こうして通常運転だ。
あの日以来、二人で修業を行うのは初めてではあったが、特別何も問題なく進んで行く修業に、キリはひとつ安堵する。
シカ「はっ、はぁっ……ぜぇっ」
キリ「ふー……」
シカ「はぁっはっ、一旦ここらで休憩するか」
荒い呼吸の中で、提示されたそれにキリも頷いて、額から流れた汗を拭った。
あたりに散らばった忍具を回収して、地面に腰を下ろすと、キリは整備しながら忍具たちを元の位置へと戻していく。
シカ「お、キリ。あっちの木陰でやろうぜ」
キリ「そうね」
風が気持ち良さそうだと言うそれに同意を示せば、ほら、とシカマルから手を差し出される。
その手を取る事に、ほんの少し迷いを見せれば、それを察知したシカマルもハッとしてその手をしまい込む。
シカ「あー、悪い」
キリ「いえ……」
ぽりぽりと頭をかいたシカマルの謝罪に首を振って、キリは一人で立ち上がって、シカマルと共に大きな木陰へと移動する。
前言を撤回しよう。
やはり、以前とそっくりそのままではないようだ。
差し出してくれた手を、何も考えずに掴むことも出来なければ、隣を歩くシカマルとはもう、ふいに肩が触れ合ってしまうような距離にはいない。
それを悲しいと思う自分を、嫌いになった。