第80章 選んだもの
【どんな事も時間が解決してくれる】
良くいうそれが本当だというのなら。
キリ「お願い、早く……消えて」
一体、どれほどの時間が経てば、解決してくれるのだろう。
ぽたぽたと目から涙がこぼれて、落ちる。
キリ「っ、うっ……く」
自分が望んで選んだはずなのに、張り裂けそうな痛みが胸の奥で襲ってくる。
勝手に好きになって、勝手に別々の道を選んで、勝手に傷をつくって痛めているなんて、なんて滑稽なのだろう。
本当は、その手を取りたかった。
その隣で、ずっと笑って一緒にいられる未来を何度も願った。
どれだけ、その想いに応えたかったことか。
昨日夢に見た二人の姿は、紛れもないキリが望んだ本当の姿だった。
叶うなら、夢の中の二人のように、なりたかった。
ただ、心に巣くった失う恐怖は、それを許さなかったのだ。
思ってることは溢れて止まらないが、何一つ言葉に出来なくて、そんな言葉たちが、胸でつっかえて酷く苦しい。
思うだけで不都合になるばかりの心が、涙に変わって地面の色を変えた。
【キリ】
【キリ何してんだ】
【キリ早くこいよ】
【キリ帰るぞ】
【キリ?】
【キリ……好きだ】
たくさんのシカマルの姿が浮かんで、キリの名前を呼んでくれる。
キリ「っ、ごめんなさい……っ」
声を殺して溢れる涙がおさまるまでに、随分長い時間が必要だった。