第80章 選んだもの
キリ「……ごめんなさい。一度も」
ごめんなさい。それは嘘なのだと。
夢の中のように、好きだと言えれば、どれだけ幸せだったのだろうか。
キリ「そう言ってくれたのは、純粋に嬉しい。でも、今後もあなたを男の人としてみることはあり得ない」
本当は、何度シカマルに惹かれたのかわからない。
何度、シカマルとの未来を想像したかわからない。
ズキズキと自らの発言のくせをして、それは自分の心を抉っていく。
大きく一度、息をついたシカマルはさらに続ける。
シカ「俺は、お前以外の女を好きになることはねぇ」
キリ「……それでも、私はあなたと同じ気持ちで好きにはなれない」
本当は好きだと、大好きだと心が揺れる。
今のキリがあるのは、キリがいくつも手放して来たものたちを、あなたが。シカマルが、拾ってくれたからだ。
どれほど、シカマルの隣は居心地が良かったか。
シカ「キリ、俺は……お前の性格もよくわかってるつもりでいる」
「これだけ一緒に居たからな」と、その瞳から目を逸らせない事が辛かった。
シカ「お前にほんの少しでも、気持ちがあるなら俺も一緒にそれを背負わせてくれ」
その覚悟はとっくに出来ていると、シカマルは告げる。
キリ「……っ」
それは、間違いなくキリの負い目を理解した上での発言で、思わず言葉が喉元でつっかえた。
シカ「俺はお前の本心が聞きてぇ」