第80章 選んだもの
シカ「昨日は悪かったな」
晒し者にしてしまったと、シカマルはバツの悪そうに、頭をかいた。
キリ「……昨日は、あのあと大変だったみたいね」
そう言って、ほんの少し本題から逸れるように、キリは意味のない悪あがきをしてみせる。
すると、夜遅くに帰宅したシカマルは、サクラ達の止まらない質問責めや、キバやアスマ達に茶化されまくったその後を思い出して、苦い顔を見せた。
シカ「あーまあな。でも、もうお前には迷惑かけねぇはずだ」
そのために、昨日の帰りがあんなにも遅くなったのだ。
みんなが、好奇心でキリへと話題を振ることがないように、全部自分が対応して、くれぐれもキリに飛び火させる事のないようにと釘を刺しておいた。
シカ「あんなところで伝えるつもりは無かったけどよ。昨日のが、全部本心なのには違いねぇ」
キリ「……」
本心であること。そんなことはシカマルの言葉を聞いていれば、すぐにわかった。
シカ「お前の強さも弱さも。出会ってからのお前も、お前の……過去も。全部ひっくるめて、キリの事が好きだ」
キリ「っ……」
こちらを真っ直ぐに見つめて、そう告げたシカマルの言葉は、正直に言ってしまえば、とても嬉しく思った。
キリ「私は……」
続く言葉が、痛いほどにキリの胸を締め付ける。
キリ「あなたの事は、決して嫌いではないしむしろ大切に思ってる。たくさん、感謝してる。でも、そういう風に……見た事はないわ」
その半分は本当で、半分は本心とはまるで正反対な嘘だった。
ぎゅっと、こぶしを握ったシカマルを見て、キリの胸が詰まるが、自分はこの嘘を真実にする事を決めたのだ。目を逸らすわけにはいかない。
シカ「……っ、今まで一緒にいて、一回だって俺のこと男として見てくれたことはねぇのかよ」