第80章 選んだもの
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翌日。
キリは早朝から、修練場へと訪れた。
あの家は、当たり前だが奈良家の家で。
そんな中で色々考えていたって、冷静に考えようとしたって、どうしてもシカマルが頭をよぎる。
だから、外に出たはいいものの。
キリ「困ったな……」
とことこと、修練場へ歩きながらキリは一人苦笑いをこぼしていた。
何度も一緒に通った修練場への道のりも、一体どれほど修業を重ねたかわからない修練場も、結局はシカマルとの時間が頭に浮かぶのだ。
それはそうだろうと、苦い顔を見せながらもキリは納得する。
思い返せば思い返すほど、シカマルとはずっと隣にいたのだから。
一度大きく息をついて、キリは一人修業を開始する。
そうしてしばらく。
修業というよりは運動というのか、身体を動かしているというレベルのそれをキリはピタリと止めた。
シカ「よぉ」
声の方を振り向けば、昨日ぶりのシカマルの姿があった。
キリ「おはよう」
シカ「おう。邪魔したか?」
キリ「……いえ」
根拠もなければ、本当にただなんとなくだとしか言えないが。
キリ「なんとなく、来ると思ってたから」
それはほとんど確信に近かった。
なんの言葉も交わしていないのに、そんな風に思っていた事が自分でも可笑しくて、キリは曖昧に目を細めた。
シカ「あー……あのよ」
そうかと、少し照れくさそうなシカマルから切り出されるだろう本題に、キリは無意識に緊張で身を固くさせる。